クリーンウェアとは?需要や用途、材質なども含めて詳しく解説
クリーンウェアは、精密機器や医薬品など、清浄な状態に保たなければならないスペースで着用するウェアのことです。この記事では、需要や用途、材質など、クリーンウェアの詳細を解説しています。
クリーンウェアとは?
クリーンウェアは、塵もホコリもない、まさしくクリーンな作業服のことです。精密機器や医薬品などの製造においては、高レベルで清浄な環境が求められます。しかし、人間そのものが最も塵やホコリを発生させる原因なので、これを防ぐ手段が必要です。それがクリーンウェアであり、現在はさまざまなものづくりの現場で、このクリーンウェアが必要不可欠になっています。
塵やホコリはともかく菌ともなると、塵やホコリに付着して空気中を漂うほどに小さな物質です。したがって、クリーンウェアには、この大きさの物質ですら付着させないような能力が求められる場合もあります。
日本では医薬品の製造現場でその必要性が認識され始めたクリーンウェア。アメリカでは1950年代にはすでに、クリーンウェアの開発が始まっていたといいます。これは、宇宙開発事業のためのものであり、宇宙へと向かう航空機のクリーンルーム化によるニーズでした。
現在、クリーンウェアの使用者には、その使用目的や作業の種類により、企画や着用の際の規定、クリーニングの頻度、消毒、更衣室の環境、更衣の回数などをしっかり標準化することが求められています。
クリーンウェアの需要
現在、クリーンウェアの需要は多くの分野に広がっています。医薬品製造(注射器などの医療器具も含む)、半導体や液晶、電子部品の製造、工業製品の塗装、食料品製造(食肉、乳製品、菓子など)、プラスチックの製造、輸送機器製造などの分野において、クリーンウェアは必要不可欠なものとなっています。
また、クリーンウェアは、医療の現場で大きなニーズがあります。特に新生児室や手術室、臨床検査室において、クリーンウェアは必要不可欠な存在です。
クリーンウェアの材質
クリーンウェアは、塵やホコリをコントロールしているクリーンルームにて着用する作業着です。そのため、クリーンウェアには非常に多くの能力が要求されます。
生地
生地は、生地自体からの発塵を防がなければならないため、主に切断に強い合成繊維が使用されます。ただ、合成繊維は静電気を帯びやすく、静電気が発生してしまうと生地に塵やホコリが吸いつけられてしまうため、帯電を防ぐ加工も必須です。
クリーンウェアの種類
一般的に使用されているクリーンウェアは、大きく2種類に分けられます。ただし、素材もデザインも、メーカーやモデルにより違いがあります。清浄度がそれほど求められない(クラス10000やクラス100000)場合は上下が分かれたセパレートタイプ。クラス1000以上の高い清浄度が求められるクリーンルームにおいては、つなぎタイプのクリーンウェアが使用されます。
セパレートタイプのクリーンウェアは、その構造上、どうしても下に着用している服が露出しやすいため、注意して着用する必要があります。露出してしまうと発塵量が増え、クリーンルームの環境が悪化してしまうため、トップスはボトムスの中に必ず入れるよう、使用者には徹底しなければなりません。これができない場合は、それほど高い清浄度が求められない環境であっても、つなぎタイプを選んだほうがよいでしょう。
つなぎタイプのクリーンウェアは、高い清浄度が求められる環境で使用されます。これは日本空気清浄協会の指針においても定められていることです。つなぎタイプのクリーンウェアを着用する際は、一般的に膝下辺りまでカバーされるブーツタイプの靴を着用します。ただ、裾部分が開いているつなぎタイプのクリーンウェアもあり、こちらは上から下へ発塵を流し排出する構造になっているクリーンルームで着用します。このタイプを乱流式など、ほかの構造のクリーンルームで着用してしまうと、塵やホコリがうまく排出されなくなってしまうので注意が必要です。
クリーンウェアは管理が重要
クリーンウェアは、クリーンルームの清浄度に合わせて選びますが、それだけでは適切な作業環境を保つことはできません。クリーンウェアは、適切に管理してこそ、その作業環境を適切に保つことができます。
人間から塵やホコリが発生する
クリーンルームの環境を汚す一番の原因は、実は私たち人間です。人間の体からは、呼吸も含めて多くの発塵があり、それらを防ぐためにクリーンウェアを着用します。しかし、適切に着用しないと、隙間を通って塵やホコリがクリーンルーム内に出てしまいます。襟元、グローブ、裾、靴、皮膚の露出部分(顔・頭など)が要注意の部位です。
クリーンウェアといえども、破れがあったり、雑に着たりしてしまうと隙間ができて、そこから塵やホコリが漏洩してしまいます。生地に劣化や損傷部分があると、そこから塵やホコリが透過してしまうこともあります。また、そのような生地の劣化は、生地そのものがホコリとなる原因にもなるので、これを防ぐために管理が重要になるのです。
クリーンルーム運転管理指針
先ほど触れた日本空気清浄協会の指針。クリーンルーム運転管理指針というものですが、こちらではクリーンルームで使用する衣類について、管理基準を作り、それに基づいて管理する必要があるとしています。
これによると、管理すべき項目は以下のとおりです。
- 新しいクリーンウェアの導入時やクリーニングのあとは、必ず検品を行う(数やサイズだけではなく、パッケージや汚染状況などもチェック)
- クリーンウェアの着脱方法の指導と管理
- 着用する者にフィットするクリーンウェアの支給
- クリーンウェアの状態チェックと修理
- 使用するクリーンルームと同レベルの清浄度の保管場所を確保すること
- クリーニング前のチェック(汚れがある場合はクリーニングに出す前に洗濯)
- クリーンウェアを処分する時期の管理
これらすべてがクリーンルームを適切な状態に保つために重要ですが、クリーニングの頻度を決めることは特に重要です。
なぜならクリーンウェアは、製品により性質が異なるため、どのクリーンウェアも同じ頻度でクリーニングに出すわけにはいかないからです。一般的には40時間程度の使用でクリーニングに出しますが、実際にクリーンウェアの汚染状況を測定し、さらに経験や使用状況も加味して判断するのが理想的です。
クリーンウェアのクリーニングとは
厳格に清浄度が管理されたクリーンルームで使用するクリーンウェアは、クリーンルームと同等の場所で管理する必要がありますが、クリーニングもまた厳格に清浄度が管理された環境で行う必要があります。
クリーンウェアのクリーニングは、クリーンルーム以上に高い清浄度を持つ環境で行われます。専用の洗剤が使用されるほか、すすぎに使用される水も特別なものです。乾燥工程でも塵やホコリがシャットアウトされたエアが使用され、クリーンルームにてパッケージングが行われ、使用者へと発送されます。
まとめ
クリーンウェアの需要や用途、材質、そして管理の大切さについて説明してきました。クリーンウェアは現在、さまざまな分野で必要不可欠な存在です。しかし、適切に管理しなければ、作業スペースであるクリーンルームを適切な状態に保つことができません。そのため、職場において管理基準を設定し、それに基づいて指導と管理を徹底することが重要です。